残業の心理学〜サンプル数 1 〜

ブラックな会社に入ってしまい残業をいかに減らせるか日々格闘するサラリーマンの葛藤の話。

アニメ緊急会議!6期ゲゲゲの鬼太郎「厄運のすねこすり」

ムトウユージ再評価について書こうと思ったが一度置いておきます。

なぜなら私的に今回の鬼太郎がちょっとした事件であり神回だった!

このブログにたどり着いた方で同じく感動を禁じ得ない方はぜひ語り合いたい。

 

 

東京一極集中と過疎化、そして村を出て行く若者

 

 

まず舞台であり話の一番の肝はここだろう。

 

限界集落に骨を埋める覚悟のばあちゃん、古くからこの地に住む妖怪すねこすりであるシロ、ばあちゃんの息子であり何かしらの理由で東京へ出たショウ。この三者を中心に物語は進んでいく。



まずショウくんについて話をしよう。作中で彼は村が何もない田舎が嫌になり母に相談せず東京へ飛び出し、東京へ行ったはいいが上手くいかずコンビニのアルバイトをして日々の生活を繋いでいる。その事に疲れ偶然見たカレーのCMをキッカケに一時帰省した青年として描写される。

彼のこの描写を持ってこの村の舞台背景は同時に語られる。

 

実際東京一極集中が進んだ社会でショウくんは田舎では叶える事が難しい夢や目標だったのだろう。そしてそういう類の夢こそなかなか成就しにくいものだったりする。


久しぶりに帰って来て母に向かって酷いことを言っているが、彼の言動は無断で上京したのはいいものの、疲れて不本意ながら癒しを求めて帰って来たバツの悪さによる彼の虚勢に過ぎない。


人によっては不快に思う人もいたかもしれないが私も彼ほどでは無いにしても親に対して素直とは言い難いので胸が締め付けられる思いをした。


 

  ばあちゃんもまた負けず劣らず頑固である。私は胸が締め付けられるとは言ったものの前述したシーンに対して少しほっこりした感情も同時に持った。ばあちゃんとショウくんは口げんかしかしていないが帰って来た息子に対して心底嫌気がさしているならば帰ってきて即追い出すだろう。


しかしばあちゃんはそうはしない。


ショウくんが言ってはいけない一線を越えるまでそういう事はせず口げんかに付き合うのである。

ばあちゃんは明らかにショウくんを愛していて久しぶりに顔を見れたことに喜んでいる。


また限界集落となっても転居せず骨を埋める覚悟で居座る所も過疎化問題の特徴である。


勘ぐり過ぎかも知れないが永くその他に暮らしているシロとは無意識に共感していたのかもしれない。

おばあちゃんもショウくんと同じでやはり頑固者なのである。


 

 そしてこの2人の間に入る妖怪すねこすりであるシロ。

シロは元来は往来する人々のすねにこすりつける事により気力を吸い取り自身の力にする存在として語られる。シロは意図せず懐いていたおばあちゃんの気力を吸い衰弱させていた。

面白いのがシロは自身がそう言った性質の存在である事を自覚していなくて、それどころか自分を妖怪だとも気付いていない事だ。


言わずもがなこの設定がこの話の秀逸な部分だろう。

 


この三点が軸に話が進む。


最終的に、すねこすりは自分がどの様な存在かに気づきばあちゃんを遠ざける。その時、雛鳥を見て自分と重なるが雛鳥にはすぐに親鳥が来て餌をやる。自分とばあちゃんとの家族は仮初めである事を悟る場面がとてもつらい。結果的にすねこすりは嫉妬をした本当の息子であるショウくんとばあちゃんの仲を取り持って人の元を去る。

 

非常に多面的な構造の話であり、家族の話、愛の話、孤独の話、社会と妖怪の話、鬼太郎の話と様々な視点から観れる。

 

好きな人を殺してしまうシロ。これは一見人と妖怪は交わらないと言う今回の鬼太郎の思想に当てはまる様に見えるが、シロは人に生かされる妖怪でもある。東京一極集中にならなければシロは人間と良い距離を保てていたはずである。

この事件を通じて鬼太郎は何を感じたのだろうか…。今回の鬼太郎は製作者が意図して成長する要素を残している気がする。

 

 

孤独のすねこすり

 

 

結果的にショウくんとおばあちゃんとシロは三者別々の生活を送る事になるがショウくんとおばあちゃんは家族の愛を取り戻し孤独ではなくなる。これによってショウくんの帰省前に抱えた問題される。離れていてうまくいっていなくても帰れる場所と家族の愛をとりもたショウくんは孤独から解放され強く生きる事が出来る。おばあちゃんも全く同じ事が言える。ショウくんを失った孤独からシロを拾ったからだ。

ただシロとおばあちゃんが絆で結ばれている事はおばあちゃんしか知らない。シロは人に近寄り過ぎ、愛を知ったが故にあの後生き延びれたとしても孤独を抱えたまま生きる事になるだろう。

 

 

長々と書いたが今期の鬼太郎は面白いとは思いながらもここまで傑作になるとは思っていなかった。人と妖怪と変化する社会や環境に対して自然に且つ貪欲にテーマに盛り込んでいる。水木しげる先生への理解度がとても高い。

脚本家、監督はもちろん沢山のスタッフが優秀でブーストとなって作品を高い次元に昇華している。

これからも楽しみにしたい。

 

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